こんなもんです

中卒女が今さらなことに驚いたり学んだりする日々をだらだらと記録しています。唐突に気持ち悪い話や思い出話をします。

大人になってからの友達作り

 

 私は「友達作り」が下手だ。

 

 それはずっと昔からで、思い通りに人と接することができない若干のコミュニケーション能力の欠如と、女の子の好きな美容や健康に対する情報の疎さなどが原因なんだと思う。他にも挙げればきっとキリがないが、生い立ちや環境の違いが加味されて、年々「友達作り」が難しくなっていると感じる。

 

 だけど暗い話をしたいわけじゃない。私は「友達が欲しい」という希望を持っている。その理由は単純で、ドラマや本で見るようなありきたりなことに憧れていて、それには友達が必要だと感じたからだ。その“ありきたりなこと”は、仕事終わりに友達とお酒を飲んだり、休日にカフェでお茶をしたり、計画を立てて旅行に行ったり、友達同士でホームパーティーなるものをしてみたり……。最後は少し欲張ったけど、そんなことが日常の中にあればいいなと思った。

 

 そういうことを気兼ねなくできて、誘い合える人のことを友達と呼ぶのだろう。だけど、私にも友達がいる。片手で数えても指が半数以上余ってしまうくらいの人数しかいないけど、仲良くしてくれる友達がいる。

 

 ……だけど……だけどもう1人、2人ぐらい友達が増えてもいいんじゃなかろうか……と、ふと思うことがある。1人に遊びの誘いを断られたら終了。みたいなのがちょっとつらい。

 

 だから私は気合いを入れて、友達を作ってみようと思った。

 

 友達を作るぞ! と、やる気がみなぎるのはいいことなのだが、そのための手掛かりが何もないことに気付く。私は空ぶかし気味にGoogleで「女友達 作り方」と検索した。検索結果を占める「女友達を作る10の方法」みたいな記事に精神論を語られたり、出会い系アプリで男友達でも作っとけとさじを投げられたりしたが、ずいぶんと長い旅路の果てに、どうにか実用的な情報をゲットした。

 

 「女友達作り専用アプリ」なるものだった。早速インストール。女性ばかりの園はとても華々しい空間だった。「婚活仲間募集!」「今夜の合コンメンバーが足りません」「ヒルズで無料で飲み食いできるパーティーあるから来ない?」「コリドー行こう」「ホスト行きたい」「朝までクラブ付き合って」……え、あんだって? コリドーってホルモンの部位のことけ? とにもかくにも、私が求めてたのはこういうことじゃない……!

 

 私を「コリドー なに」と調べさせたそのアプリでは、大多数の女性がそのような利用方法をしているようで、私のような「単純に友達が欲しい」女性というのはまれ。そして大体が続かない。

 

 相手からの絵文字満載の何行にも分けられた近況報告に、返信するのが面倒くさくなってしまったり、私と似たような面倒くさがり屋さんにスルーされたり、会う約束にたどり着く前にことごとく破談した。

 

 これじゃあいつまでたっても友達ができないや! と感じた私は、物の売買からバンドのメンバー募集まで、何でもござれな掲示板アプリに場所を移した。

 

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 前回のアプリで使っていた自己紹介文をコピペして投稿すると、何日もしないうちに女性から「共感しました! 仲良くしましょう」といった感じのメッセージが届いた。

 

 プロフィールをのぞくと、彼女も「友達募集」といった内容で過去に何度も掲示板に書き込んでおり、「なかなかできないんだなあ」と同じく“共感”した。

 

 気さくな○○ちゃんとのスムーズなやりとりに、前回のアプリでのフラストレーションは見事に解消。あれよあれよと飲みに行く日程が決まった。

 

 そして、あれよあれよとその日が訪れ、「変な人が来たらどうしよう……」と待ち合わせ場所に佇む私の前に現れたのは、笑顔がとてもすてきな○○ちゃんだった。

 

 会って早々「ここら辺に知り合いのお店があるから、行ってあげたいと思ってるんだけどどうかな?」と○○ちゃん。お店を決めかねてはいたが、私にとっては知らない人が増えるだけだ……と人見知りを発揮して渋っていたら、「その辺の居酒屋にしよっか! 店の場所忘れちゃったし!」となり、チェーン店の居酒屋に入ることになった。私に気を使わせないように知り合いの店の場所を忘れたって言ってくれたのかな? と思うと少し申し訳なく感じた。

 

 お互いビールで乾杯。おしゃべりが上手な子で、酔いも手伝い楽しく過ごした。

 

 とにかく○○ちゃんは私と正反対の人だった。お酒のペースや、ざっくばらんな雰囲気にはシンパシーを感じたが、仕事をしながら毎週末テニスやバスケのサークルに打ち込んでいること、お金がたまれば休みを取り海外に行くこと(今まで訪れた国の数は数十カ国)、たくさん友達を作ってスケジュール帳を友達の誕生日で埋めるのが夢であること。○○ちゃんの生活や夢は、どれも私が持ち合わせていない感覚で少し圧倒された。

 

 正直苦手なタイプだけど、今までそうやって拒絶して断ち切っていたから友達ができなかったのかもしれないし、アラサーともなれば感覚もそれぞれだろう。キラキラしている子だけど、話せば話すほどイヤミがないし。勇気を振り絞って仲良くしてみようかな……。てか、そもそも何の面白みもない私に興味がないか。そんなことを考えながらお酒を酌み交わしていた。

 

 ○○ちゃんは一通り自分の生活や感覚を話すと、ほげーっと聞いている私に「よかったらあなたもそういう集まりに来てほしいな!」と言った。

 

 社交辞令かなーなんて思いながらどんな集まりか聞いてみると、早速来週にホームパーティーがあること、月末にバスケをやることを、○○ちゃんは「ぜひ来てほしい!」という言葉を添えて誘った。

 

 “ホームパーティー”とやらに縁がないと思っていた私は「ホームパーティーって何をするの?」と聞くと、○○ちゃんはスマホを取り出し、「これこれ」と画面を私に見せながら「料理上手な友達がこんなすてきな手料理を振る舞ってくれるの!」と話した。

 

 茶色一色じゃないおいしそうな料理の数々が○○ちゃんのスマホに写っていた。茶色じゃないのにおいしそうという新感覚に襲われながら、その友人の家はシェアハウスで、20人くらいなら余裕で入れるおしゃれで広いお家であることや、2000円で好きに飲み食いしていいこと、その友人が毎週そんなホームパーティーを開催していることを聞き、本当にそんな世界もあるんだ……! と私は目を輝かせた。

 

 行ってみたい! と思った。だけど、なんだか怖いとも思った。私が恐る恐る「友達と一緒でもいい?」と聞くと○○ちゃんは満面の笑みで「もちろん! 人数は多いほうが楽しいよ!」とウエルカム。

 

 ○○ちゃんは続けざまに、後日のバスケの詳細や、知り合いの60歳の女性がトークショーをするからそれにも来てほしいということを話していたが、私の頭の中はホームパーティーのことでいっぱい。「他のはホームパーティーが楽しかったら行けばいいや」と思い、ひとまずホームパーティーに参加したいことを伝えた。

 

 ○○ちゃんと解散したあと、私は早速「ホームパーティーとやらに誘われたんだが、一緒に来ないか?」と友達を誘った。友達も私と似たような子で、好奇心旺盛だけど、そういったことに少し縁遠い。1人で行くのは怖いし、友達がそこでおいしいものを食べたり、その中で友達を作ったりして楽しんでくれたらいいなと思った。

 

 唐突な誘いに対し、友達は「何の知り合い?」「どこ?」「こわ」と尋問をはじめたが、行きたい一心の私は「友達募集の掲示板で知り合った人だけど、明るくてイヤミがない人だった」「その人の友達の家でやるみたいなんだけど超きれいで超広い家らしい」「2000円で飲み食い自由にどうぞ~って感じだから、雰囲気が苦手に感じたら途中で帰ればいいよ」と、なぜか弁明するように説明した。

 

 すると友達も「せっかくだし行こうかな。こういう機会ってないもんね」と、一緒に行くことに賛成。○○ちゃんに2人で行くことを報告した途端に緊張したが、「手土産は何にしようかなあ」なんて考えながらその日を待った。

 

 人生初のホームパーティーが迫るある日。近々ホームパーティーに初参戦することを、知人に何かの拍子で話した。経緯とともに説明すると知人は顔をゆがめ一言、「それ大丈夫?」。

 

 「えっ、なにが?」と目を丸める私に、「分からないけどね……」と前置きをした上で、「マルチ商法や宗教の勧誘の手口に似ている気がする」と1つ1つ疑問に思ったことを話し始めた。

 

・まず、知人・友人がたくさんいるような充実している人がインターネットで「友達探し」をするか?

 

・初めて会った人を「自分の家でもなく、会わせたこともない友人の家」へ誘うか?

 

・その料理上手の友人とやらも、ホームパーティーは人数が多いほうが楽しいからとはいえ、知らない人を家に入れたいか?

 

・そもそも数十人が入れる広いシェアハウスで、毎週ホームパーティーを開催しているって、どういう集まり?

 

 といったことを、過去に知人が実際に遭遇した体験談とともに丁寧に説明してくれた。私は「その通りすぎる……」と納得するばかりで、初めて会ったときに知り合いのお店に行きたいと提案されたことや、謎の60歳の人のトークショーに誘われたこと、経緯や会話の全てが怪しく思えてきてしまった。

 

 知人は「聞けば聞くほど怪しい! その人のLINEの写真見せて。……あー、もうこの笑顔も怪しい!」とはやし立てながら、「行く前に気付いてよかったね。でも多分、どっかきみの中で怪しいなと思っていたところがあったから話したんじゃない?」と、落ち込む私をなだめた。

 

 確かに「行く前に気付けてよかった」というより、「冷静に判断すべきだった」という反省の気持ちでいっぱいになった。

 

 私の中で「どこか怪しい」という気持ちはどこかにあったのだろう。実際、誘った友達に「もし雰囲気が怪しかったら料理をほっぺに詰め込んでさっさと帰ろう」などと話していたり、○○ちゃんに個人情報にあたることはなるべく話さないようにしたり、予防線を張っていた。

 

 だけど、もしも本当にそういった勧誘だったとしたらその場から逃げればいいと思っていたし、断ることができると変な自信を持っていた。

 

 それも今思えば、ただのうぬぼれと世間知らずだ。数十人がいる知らない場所で、逃げ場なく延々と勧誘をされるかもしれないし、自分は平気でも、友達が断りきれない場合だってある。

 

 「友達を作りたい」という気持ちがリスクをかえりみず、大切な友達を巻き込んでしまっていたかもしれない。私は浮かれていた。

 

 ○○ちゃんには断りのLINEを入れ、誘っていた友達とはホームパーティーに行くはずだった日、適当に見繕った居酒屋へ行き、今回の経緯と、申し訳ないという気持ちを話し、笑い話としてことなきを得た。

 

 結局のところ、そのホームパーティーが本当に怪しいものだったのかは分からないけれど、私はただただ落ち込んだ。

 

 友達を巻き込んでしまっていたかも……という反省の気持ちと、「何十人規模でホームパーティーをするような世界もあるんだろうな」と純粋に思っていたのがなんだかばかみたいで、悲しい気持ちでいっぱいになったからだ。

 

 今いる友達とは、共通の趣味やメリットがなくても、“若さ”というタフな勢いで自然と今の関係になれた。でも、日々忙しい大人の社会人が、メリットや明確な目的もなく、私と友達になってくれることはないのかもしれない。

 

 無知ゆえに「大人になってからの友達作り」に絶望したが、もっと教養を身につけて、「友達を作る」ことに執着せず、今の自分の状況をまず受け入れることからはじめたい。頭を冷やすためにも。