この間、カレー料理教室に行って本格的なスパイスカレーを作ってきた。
これはいわゆる「友達作り奮闘記！」みたいないつもの小寒いやつじゃなくて、単純に最近カレーにハマっていて、おいしいカレーを自分で作れたらいいなあという気持ちで胸がいっぱいな日々を過ごした結果の行動である。
そんな「カレーを作りたい」という真っ直ぐな思いで行ったから、教室に入って早々、「名前と趣味を書いてください」と名札シールを渡されたときはめまいがした。
うぅ、そういう感じか…とあたりを見回すと、和気あいあいと男女があちらこちらで輪を作って会話を楽しんでいる。うわぁ…となってしまった私は、話しかけられず、会話が広がらず、かつ角の立たない趣味として「探し中」とシールに書き込み、エプロンにペタリと貼り付けた。
4人1組の男女グループになり、料理が始まる。まずは6個の玉ねぎをみじん切りにする作業から。
私は率先して作業に取り掛かった。円滑に料理をしていくこと、足を引っ張らないようにすること、そして何より会話をしなくても「作業してるから話せないだけですよー」感で人々に不安を与えないことをモットーに。
これは、みんなで料理をして、カレーが出来上がり、食べて、教室から出るその瞬間まで、自分が悲しい気持ちで過ごさないために決めたマイルール。作業に勤しむ。黙々と。
でも、1人でみんなの作業を奪って料理をするような「できる女アピール」や「うざい女」と思われかねない行為も、キャラじゃないし色々と無理なので、作業以外は人の会話に頷いたり、一生洗い物をしたり、一生レシピの紙を読み込んだりしてやり過ごそうと決めた。
そう頭で反復しながらきざむ玉ねぎ。頭上で男女の会話が飛び交う。たまに誰かの話に「おー」と頷いてみる。玉ねぎが目にしみる。
誰かが「名札の趣味、なんて書いてあるんですか？」と聞き始めた。「きたきた」と思った。自分の番になって、「探し中なんですよね」と苦笑いをしたら、「そうなんですねー！」と返されて、次の人へ。
すると次の人も「いや、俺、間違えた」と苦笑い。名札を見ると「会社員」の文字が。どうやら職業と間違えたらしい。みんなで「あはは」と笑った。
もう1人の男性が「僕も職業を書けば良かったな。趣味書くの小っ恥ずかしかった」と言うと、もう1人の女性も「たしかに…」と同調した。それを聞いていてもたってもいられず、「で、ですよね。なんか趣味とか書くの恥ずかしくて『探し中』って私書いちゃったし」と言うと、みんながうんうんと頷いてくれた。
このわずか1往復のやりとりで私は「会話に参加できた！みんな優しい！」と舞い上がってしまい、「実は私人見知りで、こうゆうのも初めてだし、すごく緊張してて。でも最近カレーにハマっていて…」と1人でベラベラと喋ってしまった。あ、キモかったかな…と自責の念を持たせないほど、「うんうん」と優しく話を聞いてくれる人々に、私は「優しい！優しい！！優しい！！！」と歓喜した。
なるほど、私はこじらせ人見知りババアだったのだ。キモくてキモいこじらせ人見知りババアの発作が出たのだ。「マイルール」とか言ってたよね、え、こわ、無理！なのだ。みんなが優しいと分かったらなんかちょっとうれしいみたいな感じですか！こじらせ人見知りババアきんもーーーーーーー！！！と自分を恥じた。それからの私はいっぱい喋った。こじらせ人見知りババア特有の「初対面の人とは話せる」アレかもしれないけど、カレーを作りながら、みんなと話してたらとても楽しかった。
それからの数時間、先生の白シャツ黒腰エプロン姿に「え？今からカレー作るのに？白シャツ？え？カレーがはねたら？え？え？」ってなっちゃったり、みんなで出来上がったカレーを食べるとき、2、3人の男性陣が「俺まだイケるわ」「まだ腹5分目だし」とか言いながらお米をおかわりしていて、これはいわゆる学校の給食の時間を彷彿とさせるボケか？と思いきや、どうやらマジの男性アピールで、一周回ってほほえましい！！！！となったり、色々気になることはあったけど、全体的にとてもあたたかい雰囲気で、勝手にファイティングポーズを取っていた自分が恥ずかしいことには変わりなかった。先生めっちゃただのカレー好きのいい人だったし、おかわり男性陣も残りが出ないように頑張ってたくさん食べてえらかったし。
こうして「友達作り奮闘記！カレー編」は幕を閉じた。肝心のカレーはハーブがすごくて「バーモントカレー食べてぇ！」ってなったけど、今週末にお家で自分好みの味に作ってみたくなったくらいおいしかった。友達はできなかった。
