昨夜も仕事をお手伝い。朝6時頃に眠って昼前に目覚めた。今日こそ買い出しに行かなくちゃ大変なことになってしまうから、眠たいけれど我慢、我慢。
買い出し中、寝不足のせいか同居人とちょこっとケンカをしてしまってね。買い込んだ食材を冷蔵庫に詰め込んだあと、一人でお出かけすることにしたんだ。気分転換ってやつで。
「行ってきまーす」と家を出て乗り込んだ最寄駅に向かうバス。それが不思議なバスだった。車内にHIPHOPらしき音楽がズンチャズンチャと流れているんだ。うるさい! というほどでもない、絶妙な音量で。
誰かのイヤホンが外れてしまったのかしら。そう思ってバス停をいくつも超えたけれど、鳴り止まず。ああ、これは意図的なものなのね。私の後方で誰かがHIPHOPを流しているみたいなの。
きっと怖い人だから、誰も注意できないんだ。というより、注意するには小さい音量で、乗客たちは頭をひねっているようだった。耳をすませばわずかにHIPHOP……という感じ。
そうこうしているうちに降りるバス停が近づいて、降車ボタンを押したらHIPHOPが鳴り止んだ。ああ、やっぱりイヤホンが外れて……と立ち上がったとき、私と変わらない背丈の男の子が目の前を駆け抜けた。
見た瞬間にビビビときた。大きめサイズの上下の服に、少し伸びた坊主頭に刈り込まれたガタガタの線、青くて細い眉毛。きっと彼がHIPHOPを流していたんだって。
彼は運賃箱に小銭を勢いよく投げ入れた。そしてそのまま静止した。3秒後、「あ、これお釣りでないよ」という運転手の声がマイクを通して車内に響いた。
彼はハッとしたあと、「……じゃあ、お釣りはいらないっす!」と言って外に飛び出し、交通量の多い道路を渡って走り去って行った。軽やかに、恥ずかしそうに。
私、彼のその姿を見て(ああ、かわいい!)と悶えてしまった。きっと彼は悪いことを覚え始めて、学校をサボって、仲間が待つ地元の駅に向かう途中で。大人になったときにふと思い出すような、そんな瞬間を見てしまった感覚。
大人に怒られてばかりの若い彼の世界に触れたような、ドキドキ感が伝わって悶えてしまった。彼にとっては雑魚の大人である私の無責任な感情が軽やかに、恥ずかしそうに駆け抜けた。
帰宅後、そんな話をしているうちに同居人とは仲直りしていて、豊かな冷蔵庫から収穫したさまざまな食材で夕食を準備した。あ、写真奥に見えるのは1巻と21巻がない歯抜けの「鬼滅の刃」だよ。