こんなもんです

中卒女が今さらなことに驚いたり学んだりする日々をだらだらと記録しています。唐突に気持ち悪い話や思い出話をします。

お隣さん

隣の人が引っ越しちゃうんだって。最初はふたりだったのが、子どもが生まれて、家族になって、歩けるようになって、喋れるようになって、近くに家を買うことにしたんだって。

あいさつをしたり、おすそ分けをしたり、昼間は掃除機の音が聞こえて、夜は外廊下に湯気と子どもの笑い声がたちのぼって。その程度の付き合いだけど、それしか知らないけど、いなくなっちゃうのが少し寂しいんだ。

同居人は「友達じゃないから寂しい」って、私よりずっと落ち込んでいた。そうなんだよね。近くに越すけど、友達じゃないから遊びに行くわけじゃない。「お隣さん」という関係が終わっちゃうから、寂しい。

ひとしきり落ち込んで、同居人は「最後のあいさつのときに電話番号を聞くんだ」と張り切った。引っ越した後に用がなくても、それがいいと思った。私は日が暮れるまでの1時間、近所を歩くことにした。

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興味がないから通ったことがなかった道で、じいさんが自転車のカゴに犬を乗せてギーコギーコと走っていた。じいさんは犬に「マスク忘れちまったな」と話しかけていた。犬はその先のスーパーをじっと見ていた。

何度も通った道で、いつまでも帰らないばあさんといつまでも家に入らないばあさんが、「じゃあまた」「はいどうもね」「10日よね」「そう10日」「はい、じゃあまた」「はいどうもね」「はーいどうも」「はーいじゃあまた」と何度も会釈していた。

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猫は探していないときにひょっこりと顔を出す。連休最終日は狭い町がより狭く感じた。砂利を蹴るタイヤの音がすると、カーテンの隙間から顔を出して小さく手を振ってくれた隣の子は、もう何歳なんだろう。

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夜、同居人の会社の事務所を探しに、という名目でその辺をドライブした。空き家の看板がかかった家を見て、住むには良さそうだ、と話して帰ってきた。寂しいような、背中を押されたような。何だかよう。