何でかわからないけれど、今日はお坊さんが死んだ人たちにお経をあげる日だから、おばあちゃん家に行った。
正直、お坊さんがお経をあげている間は暇で、立派な紫陽花を両脇に抱えた仏壇と、大きな声を出すお坊さんと、おばあちゃんの平べったい横顔をうかがいながら、かゆいところをかいたり、お焼香のやり方を思い出したりした。
お経をあげられている側のおじいちゃんもそれはきっと同じで、私のしびれた足をつついてみたり、アーメンのポーズをして笑わせようとしたりしているだろうから、罰当たりではなさそうだと思った。
お坊さんが帰ったあとは、仏壇に供えていたフルーツをむいて、病気とお墓の話をして盛り上がった。ふと庭を見たら、穴がぽっかりとあいた立派な紫陽花の木があった。
別に、明日も明後日も、来月も来年もおばあちゃんはいるけれど、そうじゃないかもしれないから、おばあちゃんの話をたくさん聞いて、相槌をたくさんした。勝手に疲れちゃって、勝手に悪いことをした気がした。
傘を忘れて帰って、生乾きの洗濯物をもう一回洗濯したあと、同居人に「今日見た」というでっかいカエルの写真を見せてもらった。もう梅雨でいいんじゃないかな、と思った。