久々に、のたうちまわるほど胃が痛くなった。胃痙攣だ。
のたうちまわるほど、というのは大袈裟かもしれないけど、胃痙攣は救急車を呼ぼうかと考えるくらいには痛い。呼んだことはないけど、とにかく痛い。
力んでいないときに食らうボディブローのような痛みが少なくとも3時間、長くて6時間は続く。のたうちまわるほど、というのは大袈裟ではないかもしれない。
10年ほど前に初めてこの痛みに襲われた。半狂乱で病院に駆け込み、先生に「助けてくれェ〜……」としがみついたら、「胃痙攣ですね」と診断された。
「なんでもいいから治してくれェ〜……」と訴えると、「胃痙攣は症状で病名ではない」「胃カメラを飲まないと痛みの原因はわからない」「だから今すぐは治せない」と言われた。
原因がわかれば治療できるかもしれない。胃が痛まない人生を謳歌するかもしれない。だけど、胃カメラを飲んでいない。何度と襲う痛みを、鎮痛薬と太田胃酸のガブ飲みで耐えてきた。
なぜなら怖いから。異物が口、喉、食道を通るなんて、胃の中をかき回すなんて恐ろしいから。「ボゴベェ〜ッ」と断末魔の叫びをあげながら、いろいろな汁を垂れ流したくないから。
胃カメラを飲むくらいなら、6時間のたうちまわるほうがマシ。何が原因かわからないまま死んだほうが幸せ。ウッ、胃カメラのことを考えるだけで……ボゴベェ〜ッ。
そう思っていた、シャウエンが避妊手術をするまでは。シャウエンは腹にメスを入れられた。怖い思いをした。頑張った。私も頑張らなくてはいけない、と思った。
シャウエンはぬいぐるみではない。腹の縫い目は痛むだろうし、生々しい。これに比べたら胃カメラなんてチョロいぜ、何本でも飲んでやるぜ、と思った。
シャウエンから勇気をもらった。近々、または再び胃が痛んだら、もしかしたら、病院に行ってくる。