私の手は昔、スナックの一見の客に「小学5年生の男児」と例えられた。
爪はかんでしまうから丸くて小さい。指は小さいころから曲げたり鳴らしたりして遊んでいたから少しゴツゴツしている。
皮膚は少し浅黒くてやわらかい。爪のまわりの皮はむしってしまうからささくれている。
私の手は、お母さんに爪を切ってもらっている活発な小学5年生の男児、といったところだろうか。
当時、私は「小学5年生の男児」を褒め言葉として受け止めた。例えた人の目尻が、いとおしいものを見るように下がっていたから。
今でも「小学5年生の男児」のフィルターをかけて自分の手を見ると照れてしまう。憧れるような華奢な手ではないけど、いとおしい。
太い二の腕、不気味なX脚、下ぶくれの顔も、何かに例えられたい。誰かにとってはいとおしく見えるものなら、きっと好きになれるから。