歴史の授業において、「井伊直弼はどんな人ですか?」と聞かれた場合。普通、「日米修好通商条約に調印した」「桜田門外ノ変で暗殺された」など人物に関する事柄を答えるだろう。
しかし、私は真っ先に「優しかったのかなぁ」「いや、自己中心的だったのかも」などと人柄を考える。たくさん考える。そして、「そんなの、親戚でもない他人の私が勝手に答えるなんて失礼だよね……!」という結論に行き着く。だから、答えられない。要するに、バカ。
勉強って、難しいですね!
買い物帰りの車中、同居人が突然、「親父の体調が最近良くない」「そろそろやばいかも」と、遠くを見つめたとき。私もまた深刻な顔で「そっか……」と頷き、また頷くことしかできず、しんとしたあと。
大きな霊園の前を通り、ふと、お盆のある晴れた日に行った墓参りの情景を思い出して。汗ばんだ肌がジリジリと焼ける心地よさを恋しくなって。たった30秒ほど前の会話を、車中の静けさを、すっかり忘れて。「あ〜、久しぶりにお墓行きたいな〜!」と言った、私。
「大きな霊園だ〜→晴れた日のだだっ広い霊園も案外いいよな〜→久々に行きたいな〜」という悪気は全くない単純アホボケ思考回路が、「同居人の親父→体調不良→死」という大不謹慎ルートと交わったとき。二つのゴールが「墓参り」であることに気付いたとき。
同居人の表情。焦る私。張り詰める空気。
会話って、難しいですね!
(親父はその翌々日くらいに元気になった。毎日ボートに行っている)