こんなもんです

中卒女が今さらなことに驚いたり学んだりする日々をだらだらと記録しています。唐突に気持ち悪い話や思い出話をします。

お年賀

年末年始、いろいろあった。家族とのお正月は、今年もお通夜ムードだった。

しゅんと萎んでいくおせちを見つめながら、「どうして父は人をとことん追い詰めて、謝らせたいのだろう」「どうして祖母は死ぬまで人を許せないのだろう」などと考えていた。

炭酸が抜けたビールを喉に貼り付けながら、「私がもっとおしゃべり上手だったら、おせちをおいしく食べられたかな」「ピエロのふりをしてアホなことを言う以外の能があれば、酔っ払えたかな」などと考えていた。

早々に食卓を片付け、荷物をまとめた帰り際、父に「迷惑代」といって3万円を渡された。翌日、祖母に「昨日はごめんね」と呼び出されて、3万円を渡された。「お年玉がよかったな」なんて冗談も言えなかった。

だけど年末までさかのぼれば、2022年の日々を振り返れば、かわいい、優しいが私にはたくさんあるから大丈夫って思う。例えば年末の買い出しでスーパーへ行ったとき、袋詰めの台でかわいいおじいと、かわいい同居人に出会った。

買い物を終え商品を袋に詰めていると、台の向かいから「これはまずい……まずいぞこれは……」とぼやく声が聞こえた。破れた袋からあふれた商品をかき集め、必死に持ち帰ろうとしているおじいのSOSだった。

台の向かいで起こっている小さなハプニングは、各家庭の新年の準備の音にかき消されて私にしか届いていない。私はすっとぼけることができず、だけど話しかけたらびっくりさせちゃうかな、と野暮ったいお人よしを発動して、隣で袋詰めをするふりをしている同居人に「あのおじいさん、袋が破れちゃったみたい」とこっそり伝えた。「ほんとだ」と、おじいの狼狽を観察する同居人の視界に、余った袋をちらつかせた。

 

私たちは年末の買い出しだというのに、エコバッグを忘れてしまっていた。レジ前で気付き、「1枚で足りるよ」「いいじゃん2枚買っとけば」「家にいっぱい袋あるからいらないよ」とくだらない口げんかを店員に見せて、結局袋を2枚購入した。

同居人の言う通りでちょっと悔しかったけど、袋は2枚でちょうどよさそうだった。だけど目の前に、袋が破れ窮地に立たされたおじいがいる。買い直せばいいのに、どう見ても無理なのに、底まで破れた袋に商品を詰めて持ち帰ろうとしている。

私の遠回しな意図を読んだ同居人は私から袋を取り上げ、単刀直入におじいへ渡した。「じいさん、これ、どうぞ! うんいいよ、使って、はい!」と、ハキハキと話しかけた。

おじいは私たちのことを絶対に忘れないと意気込むような眼差しで「どうも、すんません! いやあどうも!」と繰り返し、商品を詰めるとさっさと帰ったからかわいかった。好感の持てる振る舞いを躊躇なくする同居人の姿勢がかわいかった。もじもじしている私もちょっとだけかわいかった。

そして私たちは1枚の袋には入りきらなかった商品をダンボールに詰めて帰ったから、やっぱりかわいかった。

 

2022年の日々には、優しいがあふれていた。「ありがとう」ってたくさん言った。理由があったりなかったりの優しいに支えられて明日もシャウエンに優しくいられるから、これからも優しくされるようにありたいと思った。

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2023年もぼちぼちで、悪くない予感がしている。お母さんから私の幼少期のエピソードとともに誕生日を祝うメールが届いて、1年分のかわいいと優しいをすでに手に入れてしまった。やったー! あけましておめでとう、今年もよろしくね!