「毎晩、怖い夢でも見ているの?」と同居人に心配された。聞くと、私のうなされているような声に驚いて目を覚ますことがよくあるらしい。
実はそれ、君のいびきをかき消すために、クレヨンしんちゃんのみさえやパニック映画の冒頭で人食いグモに殺される役のマネをして、「しんのすけ〜!」や「たた、助けてくれ〜……!」と叫んでいる時の声なんだ、とは言えなかった。意識がはっきりとした状態で、とも。
報復に燃えているか、頭がおかしくなったと思われて、禁止されそうだから。たしかにはじめは騒音に対して騒音で応じる、いわば血で血を洗う争いをするつもりだった。だけど最近は、「今夜は何て叫ぼう」と考えながら爆音のいびきを待つ時間と、渾身の一撃をぶつける瞬間が楽しい。
本当は、「毎晩、君のおてんばないびきと夜遊びをしているのさ」と伝えたかったけど、無難に「へえ、そうなんだ。自分ではわからないなあ」と返した。今夜は「うちのタマ知りませんか〜!」と叫びたくて。