こんなもんです

中卒女が今さらなことに驚いたり学んだりする日々をだらだらと記録しています。唐突に気持ち悪い話や思い出話をします。

土の正体

おばあちゃんが「放っておいても増えるから」と分けてくれた多肉植物が全滅した。うんこの匂いがする土の中で真っ白になって朽ち果てた。

うんこの匂いがする土は、多肉植物を私に持ち帰らせる用の鉢に植え替えるとき、おばあちゃんが「軽い土の方がいいかな」と言って物置小屋から出した袋に入っていた。

袋を開けた瞬間うんこの匂いがしたから、不安になって「なんかこの土臭くない?」と聞いたけど、おばあちゃんは「そうだね、なんでだろう」と言ってせっせと植え替えるし、袋に書かれた文字はかすれていて、植え替え終わった姿がそれっぽかったから、私は「そういうものなんだろう」と納得して持ち帰った。

うんこの匂いがする多肉植物はおばあちゃんの教え通り室外機の上に置いて放っておいた。しばらくの間、窓を開けるとうんこの匂いがして、同居人に「ベランダからうんこの匂いがする」とよく怒られたけど、「そういうものなんだ」と言ってしっかり放っておいた。

そして、鼻がうんこの匂いに慣れる頃には多肉植物の存在をすっかり忘れた。というより、うんこの匂いがする植物がベランダの隅にある事実を受け入れたくないから、おばあちゃんの「放っておいてもいい」という言葉を都合良く受け取って、記憶から消し去った。

それからしばらくして、ふと多肉植物のことを思い出した。私は「ずいぶんと放っているから、鉢一面が多肉植物で埋め尽くされているかもしれない」と期待を膨らませて、室外機の上をのぞいてみることにした。

緑と赤の鮮やかな色をしていた多肉植物は増えるどころか真っ白になっていて、少し減っていた。私は状況を理解できなかった。「なんだこれ」とか「腐ってんじゃねえか」とか「やっぱり臭い」とか「こういうものなのかな」とか、大量のはてなが頭の上に浮かんで、とりあえずまた放っておくことにした。

それからまたしばらくして他の植物を植え替えるとき、再び多肉植物のことを思い出した。植え替え用の土が足りなくなったけど、買い行くのは面倒だから、多肉植物の土を使おうと思い付いた。

真っ白になった土の表面をすくい、中の方の土を残すと、切り戻したペチュニアの挿し芽を植えた。多肉植物は土と同化するように消えていたから心が痛むこともなく、「いい肥料になるかもしれない」くらいに考えた。

多肉植物を植えていた鉢は吊り下げられる形でとてもかわいかったから、物干し竿用の柱にくくりつけることにした。水をあげるたびに、あのうんこの匂いのする水がじゃがいもを植えた鉢に滴り落ちてちょっと気持ち悪かったけど、「今度は放ってない」から気にしなかった。

そして、ペチュニアの挿し芽は発根することなくどんどんと萎びれて、滴り落ちる水を浴びたじゃがいもは次々と枯れていった。その哀れな姿を見たとき、私はようやく気付いた。このうんこの匂いがする土は肥料かもしれないと。

もちろん、真っ白になって消えた多肉植物が肥料になったわけではない。多分、おばあちゃんが物置小屋から出したのは肥料が入った袋で、私たちはそのことに気付かず使ってしまったんだ。間違いない、肥料はうんこの匂いがする。植物も枯れて当然だ。

これまでに起こった全てのことが腑に落ちると同時に、この状況が恐ろしくなった。私は100円ショップに駆け込み土を購入すると、肥料と思われる土を二重にした袋に捨て入れ、ペチュニアとじゃがいもの鉢を新しい土に替えた。そして、うんこの匂いはきれいさっぱりなくなった。

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これは、私のようなガサツで無知な者が同じ過ちをおかさないことを願う書記だ。土からうんこの匂いがしたら肥料であることを疑った方がいい。