お宮参りのようなワンピースを着て、幼馴染と待ち合わせ。テレビの交通情報に気が滅入って、近所のカフェでお茶をした。
映えない二人だから、昔話に花が咲く。同級生、一個上の先輩、一個下の後輩、スナックの客、近所の歩道橋で暮らしていたおじさん、通学路の家の庭にいたポコ。
空になった日替わりパスタの皿を前に、保健室の先生との思い出話で一番の盛り上がりを見せた。
中学校時代に世話になった保健室のモロハシは、白髪をオレンジ色に染めているパワフルなおばちゃんだった。
モロハシは私たちが保健室へ遊びに行くたびに、「うるせぇ!」「さっさと出てけ〜」と手を払った。昨日超ウケたこと、彼氏のこと、嫌いな先生のことを話すと、「チョ〜くだんない」と呆れた。
みんなが授業中に、ぐちゃぐちゃな家族のこと、泣きすぎて頭が痛くなったことを話すと、眉間にしわを寄せながら、モロハシの湯呑みで冷たい水を飲ませてくれた。ぶっきらぼうで優しかった。
そんなモロハシのメールアドレスが、二人のアドレス帳に15年間眠っている。二人は外で一服するついでに、「久しぶり〜」とメールを入れてみた。
二人はエラーで返ってくるだろうとたかをくくっていたから、1本吸い終わる前に返ってきた「お久しぶりです」のメールに超ウケた。
二人は覚えていないだろうと期待しないでいたから、私の父、弟、祖母のこと、幼馴染の母の店のことを聞かれて驚いた。
会いたいと言ったらすぐに断られたけど、変わらずにぶっきらぼうでいてくれてうれしかった。映えない二人が、少しだけ代わり映えした2時間ちょっとのお茶だった。