ごはんは黄色いほうを自分の茶碗によそったり、サバの味噌煮は骨が多いほうを選んで食べたりしている。同居人にはおいしいものを食べてほしいから。
それなのに、「ごはんが臭いなぁ」「骨が多いなぁ」とぼそっと呟かれると、ちょっぴりムッとしてしまう。「悪うござんしたね!」とおちょけるけれど、ちょっぴり悲しい。
私のほうがごはんは臭いし、骨は多いのに。毎日毎食、おいしいものを作ることは難しいのに。こっそりとしているけれど、思いやりなのに。……はぁ。
もやもやした食後、心のなかでブーブー文句を言いながら、シャウエンのほうばかりを見て、「お前はかわいいねぇ」としつこく話しかける。同居人はテレビを見て「ガハハ」と笑っている。
怒りと虚しさがますます募り、シャウエンのしっぽの振れ幅が最大に達したころ、CMのあいだに台所から飲み物を取ってきた同居人が、「冷蔵庫のゼリーまだ食べてないんだ……」と言って、しゅんとした。
そういえば、ずいぶん前に「ゼリー食べたいなぁ」と呟いたら、同居人がゼリーを買ってきてくれたんだった。だけど、買ってきてくれたときにはゼリーの気分が過ぎ去っていて、そのまま食べずにいたんだった。
「わ、ごめん」と謝ると、「ううん、いいよ〜」と言って、テレビの続きを見る同居人。こっそりとした思いやりは、伝えることも、受け取ることも難しい。こたつのなかで食べるゼリーはおいしかった。