今日、沖縄から猫が飛行機に乗ってやって来る。互いに「早すぎるんじゃない?」と言いながら家を出て、猫を迎えるために洗車した車で羽田空港に向かった。
2週間ほど前の縁談から今日まで、ずっと待ち遠しくて、不安で、心配で、無駄に早起きをしてみたり夜更かしをしてみたりを繰り返した。猫の受け取り場所の貨物ターミナルには着陸の1時間前に到着した。
受付の人の呆れ顔を3回見た後、到着を知らせるブザーが鳴り、ケージの奥で青い瞳をうるませる猫と対面した。猫は空港から家までの道中おとなしく、声が上擦る私をなだめるように喉をゴロゴロと鳴らした。
家に着くとケージから飛び出し、尻尾と鼻先を立てながら部屋中をうろつく猫。ラグドールの血が入っている雑種の女の子らしい。生後10カ月だけれど、長毛だからか体はだいぶ大きく見える。
私は猫に「シャウエン」と名付けた。人は必ず「シャウエッセン?」と聞き返す。シャウエンはお気に入りの場所を見つけると寝転がり腹を見せ、爪とぎを渡せば爪をとぎ、パーカーのひもが揺れればじゃれついた。
その姿を見て私はのんきに「大物に違いない!」と興奮していたけれど、シャウエンは私が2週間かけてゆっくり感じていた倍以上のものを数時間で一気に感じ、動揺の果てに張り切っていただけなのだろう。水もごはんもトイレもせずに。
しばらくするとシャウエンは疲れていること、眠いこと、お腹が空いていること、放っておいてほしいことに気付いたのか、テレビの裏へ、暗い寝室へ、ベッドと壁の間へと入っていった。私はただ、ちゅ〜るを水に溶かしてあげることしかできなかった。
今日はぐっすりと眠れますように。シャウエンが。いつでもお腹がいっぱいで、喉がかわいたら水を飲んで、気が済むまで家の中を探検して、とりあえずはトイレをどこでしても構わないから、これからの毎日をストレスなく過ごせますように。シャウエンが。