お呼ばれされて、同居人のお姉さん宅へのこのこと遊びに行った。
「みんなでごはんを食べましょう」と聞いていたから、てっきり折り畳めるようなちゃぶ台でたこ焼きパーティーでもするのだろうと考えていた私は驚愕した。
夫妻がともに料理好きとあって、厚みのあるテーブルクロスを敷いた食卓の上には彩り豊かな料理がずらりと並んでいた。そのどれもが美しい食器やしつらえられた花とよく似合っていて、恐れ入る。
お酒の趣味も豊かで、酔っ払う暇がない。お姉さんと私とでは、同じスーパーで買い物をしたとしても手に取るものが違うのだろう。何から何までハイセンスで、私はひとしきりうなっていた。
何を飲食しても「おいしい」としか言わない私が、このような感想を述べたところで説得力に欠けるが、お姉さん宅でのおもてなしは、いいレストランでの食事に匹敵するものであった。
翌日、いとも簡単に影響を受けた私は、夜ごはん作りに渾身の力を込めた。まずは、手作り餃子。この時点ですでに間違っているような気がするが、たねの野菜を白菜と長ネギにするなど工夫した。
次に、お姉さん宅で食べたハチノスのトリッパを模した、鶏肉とウインナーのトマト煮。「模した」という言葉の使い方がどこまで許容されるものかは知らない。冷蔵庫にあるものでそれっぽいものを作ったら、鶏肉とウインナーのトマト煮になった。
果たして、わが家の折り畳めるこたつテーブルの上には同系色の料理がドン、ドンと並んだ。そのどれもが100円ショップなどで購入した安い食器やテレビのリモコンとよく似合っていて、安心する。
飲み物はコカコーラゼロだから、酔っ払うわけがない。何から何まで想像がつく味で、米が進んだ。何を飲食しても「おいしい」としか言わない私が、このような感想を述べたところで説得力に欠けるが、おいしかった。
食卓って、持ち味が出るんだな。