こんなもんです

中卒女が今さらなことに驚いたり学んだりする日々をだらだらと記録しています。唐突に気持ち悪い話や思い出話をします。

フランクフランクの病

どうして私はバカを晒して生きているのだろう。思い当たる節が、20代前半のころに訪れたアウトレットモールにある。


それまで私は割と頭が良くて、割と物事を知っていると思っていた。

周りの友人たちは地元とEXILEしかわからないけれど、私は地元とEXILEと隣町のメガドンキを知っている。

「1999年って結局地球滅亡したんだっけ?」と問う友人に、「ここ地球だから多分してないっぽくね?」と説いたこともある。

「じゃああのジジイ嘘つきじゃん」と怒る友人をなだめながら、つくづく私は自身の聡明な頭脳に感心していた。


時は流れ20代前半、インターネットで知り合った同年代の女性と仲が深まったころ、2人でアウトレットモールへ遊びに出かけた。彼女もまた地元とEXILEの他にジャグラーに通じていたから、反りが合うと感じていた。

いくつか店を周り、GODIVAのショコリキサーを吸いながら「中学生のころ互いのかかとをライターで炙って何秒耐えられるか競うゲームで私は4秒耐えたことがある」といった歓談を終えたあと、彼女が「あそこも寄りたい」と言って、あるインテリアショップを指差した。

そこには「Francfranc」と書かれたスタイリッシュな看板が掲げられていた。私は「あ、フランクフランクね、いいよ」と言って、ベンチから立ち上がった。

後方から聞こえた「え?」という声に振り向くと、困惑の表情を浮かべた彼女が私の目を見て「フランフランでしょ?」と言った。「えっ」。

私はとっさに「そういう呼び方もあるよね!」と切り返した。Francfrancってフランフランって読むんだ……と、顔を真っ赤にしながらズカズカと歩いた。黙ったままの後ろを振り返れなかった。


以降私はFrancfrancを見聞きするたびにフランクフランクが去来し、「フランフランッッ……!!!!」と赤面する病を患った。ファッションブランドの「INGNI」は「イングニ」だと思っていて、「なんかエッチな名前っ……」とも思っていたからあまり口に出さなかったけど、ある日通行人が「イング」と呼んでいる姿を目にして、「エッチじゃない……!」と感極まった。


私は割と頭が悪くて、割と何も知らないことを知った。知ったかぶりをすると痛い目を見ることも知った。インテリアショップやファッションブランド系の名前には、罠があることも。

だからなるべく、バカを晒して生きていこうと思った。フランクフランクが去来するたびに1999年に地球が滅亡していてほしかったと願うけど、していないから諦めて生きていくしかないと思った。