シャウエンが2匹になるときがある。決して私の気が狂ってしまったのではなく、気はもともと狂っているから安心してほしいのだけど、シャウエンはもう1匹いる。
つい昨日、シャウエンの替えなどなくて、体は一つだと熱弁したけど、実は時々2匹になる。わが家に来たばかりのころのシャウエンは確実に1匹だったけど、今は時々2匹になる。
もう1匹のシャウエンは、私の気が散っているときに現れる。シャウエンの体はなんと二つに分離する。私はそうとしか思えない。なぜならシャウエンは壁紙を剥ぐ、コップを倒す、カーテンに登る、トイレの砂を撒く……これらを一斉に手掛けるのだ。
部屋が崩壊の一途をたどろうとも、私が何も気に留めず、あっちゃこっちゃと散漫していると、シャウエンは1匹では不可能とされる快挙を成し遂げる。もう1匹の猫の手を借りている。今のところ目視では1匹しか確認できていないが、他にもいると思う。だからシャウエンは少なくとも2匹いる。
私が一夜をまるっと投じ、心を荒削りしているときにも、もう1匹は現れる。上下左右の皆が寝静まり、1秒が1分にも、1分が1秒にも感じるとき、私の胸にもう1匹のシャウエンがふと灯る。
ふと灯ったシャウエンは、私の肩をトンと叩かないし、耳元で「大丈夫」なんて囁かない。生身に触れると眠れるおまじないをかけて、そしていなくなる。だから私は、隣で眠りこけているシャウエンの被毛にそっと手を埋める。ひげをジグザグと震わせるシャウエンに「おやすみ」と声をかける。シャウエンは1匹だけど、私の胸にも確実にいる。
なーんだ私、気狂ってないじゃん。シャウエンが大好きなだけじゃん。やったね!